私は、トルコで医療通訳をしております、間と申します。医療通訳をしておりますと、旅行保険の大切さというのを間近に感じます。
というのも、トルコの医療水準は決して低くありませんが、旅行者が緊急の際にすぐに受診して検査をし、診断および処置を施してもらえる病院は、私立の病院に限り、かなり高額な費用がかかってしまうからです。
カッパドキアの気球ツアーで気球が落下、腰椎がつぶれる大怪我
2009年の7月、トルコを自由旅行されていたAさんご夫妻は、カッパドキアで念願だった気球ツアーに参加されました。気球ツアーは、朝夜明け前に離陸し、朝焼けのカッパドキアの奇岩風景の中を飛びます。本当に幻想的で素晴らしい景色で、夢のようだったとAさんご夫妻もおっしゃっていました。
ところが、1時間ほどの飛行の最後、着陸時に、バランスを失った気球は地上に落下してしまったのです。気球の籠には24人が乗っており、Aさんの上に他の人が乗った状態で落ち、腰の部分に激痛が走ったそうです。
Aさんご夫妻は、カッパドキアからイスタンブールに搬送され、ドイツ病院に入院されました。幸い、奥様のけがは深刻な状態ではありませんでした。
しかし、ご主人のAさんは、まったく下半身が動かせない深刻な状態でした。腰椎の一つがつぶれていて、痛み止めを使っても起き上がることができませんでした。
入院が長引く可能性もあり、Aさんは、日本の会社に電話をかけ休暇の延長を申請しました。その際会社のドクターから、半身不随になる可能性もあるからきちんと治療した方がいいと言われてしまうほど、状況は悪かったのです。
病院が導入したばかりの最先端手術を受ける
検査をしたのち、脳神経外科の主治医からけがの状況と治療に関する説明がありました。当時、最先端の技術をたまたま前月導入したばかりであり、今回のケースに非常に有効であるとのことでした。医療セメントを注入することによる脊椎の再建手術です。内視鏡手術のためダメージも少なく、成功すれば後遺症もない、と。ただ、手術は教授立ち合いの下で行われ、最新の技術を使うため高額になる、とのことでした。
Aさんは、保険会社と話し合い、手術を受けることにしました。翌々日、お昼前に始まった手術は、3時間ほどかかりました。
「手術は成功でした」
と言われるまで、奥様はずっと思いつめたような顔をされていました。さらに2時間ほど麻酔から覚めるのを待つ間も、やはり緊張はとけませんでした。
手術は無事成功、その日のうちに歩けるように
その日の夕方、執刀医でもあった主治医の先生が現れ、まだ少しぼーっとしておられるAさんに話しかけ、「起きなさい」とおっしゃるのです。Aさんは、何日も身動きできない状態が続いていたので、起き上がっても良いのかと不安に思われたそうです。
そんなAさんの手を引いて、先生は起き上がらせ、さらに立たせて、ベッドの周りを歩かせるではないですか。奥様も私も、奇跡を見ているような気分でした。先生も、
「この手術の一番の醍醐味はこうやって起き上がれなかった人がその日のうちに歩けるようになることなんだよ」
とおっしゃっていました。その後の経過も良好で、3日後には帰国の許可が出ました。
かかった費用は、すべて保険でカバー
三井住友海上の旅行傷害保険をかけていたAさん夫妻は、搬送費用、高額な手術費を含む入院治療費、帰国費用、帰国後の診察費用のすべてを保険で支払いました。