私は、トルコで医療通訳をしております、間(はざま)と申します。
医療通訳をしておりますと、旅行保険の大切さというのを切実に感じます。トルコの医療水準は決して低くはありませんが、医療費はかなり高額なのです。必要な処置を受けるにはお金がかかるので、保険があった方が安心です。
旅の途中の脳梗塞、飛行機に乗れずリハビリ治療
Eさんご夫妻は、ご主人が定年退職されてから、毎年海外旅行をされているそうです。2009年の6月には、初めてのトルコ旅行にいらっしゃいました。
参加されたトルコ周遊12日間の旅の終盤、帰国前日にイスタンブールのトプカプ宮殿を観光中に、奥様が崩れ落ちるように倒れてしまいました。脚の力が急に抜けて、立ち上がれなくなってしまったのだそうです。
救急車を呼んでいる間に添乗員が保険会社と連絡を取り、Eさんご夫妻はドイツ病院に搬送されました。医師の診察後、頭部のCTがオーダーされ、奥様は脳梗塞と診断されました。すぐに投薬治療が始まりました。脳梗塞は、発症して4時間以内であれば脳の血栓を溶かすお薬を投与することで治療することができるのだそうです。
幸い、大病院のあるイスタンブールで発症され、病院での処置も早かったので、投薬治療だけで、手術は必要ないとのことでした。ただ、後遺症に顔面のチックと左手のしびれが出ていました。飛行機に乗れる状態になるまで投薬とリハビリ治療が必要となりました。
奥様は毎日、顔面体操とリハビリに励んでおられました。ご主人は、泊まり込みでかいがいしく看病されていたのですが、お食事はやはり病院では食べたくないということでした。
ドイツ病院はイスタンブールでも最もにぎやかな地域にありますから、外食するお店には事欠きません。世界3大料理にも数えられるトルコ料理はなかなかおいしいので、ご主人は毎日違うものを試しながら、期せずして延びてしまった旅程を楽しもうとされていました。
ただ、仲の良いご夫婦だけに、ご自分だけおいしいものを食べるのは申し訳ない、とずっと仰っていました。奥様は、とても真面目にリハビリに取り組まれた結果、1週間後には、ご主人とどちらが病人かわからないと言われるほどに回復されました。
治療費全額と日本への帰国費用、付き添いの滞在費が保険でカバー
ご主人は、一番気に入った牛肉のラップサンドを差し入れされました。奥様も、ずっと病院食でしたから、おいしい、おいしいと喜んで完食されました。私も、食べたらよくなるのも早いはずと思って見守っておりました。
ところが、夕方の回診時に、主治医の先生に
「奥様の血糖値に異常値が出ている、何を食べさせた!」
と怒られてしまいました。
奥様の血糖値は毎日定時に計測されていたのでした。幸い、容体に関わることはなく、予定通り退院帰国されたのでほっとしましたが、どれほど元気そうに見えても、食べ物の差し入れは危険だと学びました。
Eさんご夫妻は、エイチ・エス損保の海外旅行保険をかけていらっしゃいました。治療費全額、日本への帰国費用、付き添いの方の滞在費が保険でカバーされました。