スリに遭ってから気づく「保険に携行品損害の補償が付いていない!」

バルセロナランブラス通りのホテルの部屋

旅行先でのトラブルは、旅慣れてきたころに遭いやすいと言われています。

私達も、まさにそのことを身を持って体験しました。バルセロナで、いわゆる「ケチャップ・スリ」に遭ったのです。さらに帰国後、盗られたカードがその直後に不正使用されたことも発覚しました。そのときの様子を詳しくお伝えします。

バルセロナでスリに遭う

2009年、年明け早々のバルセロナ旅行。航空券は、7月にブリティッシュ航空(BA)の冬期限定特別運賃を見つけて即決、ホテルは、ランブラス通り沿いの便利な立地のホテルが、オフシーズンかつ早期予約割引のお得な料金で手配できました。

冬のヨーロッパは寒いですが、バルセロナはほとんど雪は降らないと聞きますし、オフシーズンなら安く行ける。観光の目的は、世界遺産のモデルニスモ建築の数々と美術館博物館を見て回ること、そしてスペイン料理。多少天気が悪くても観光に影響はないだろうということで決めた行き先でした。

私達夫婦2人での海外旅行は、2005年の婚前旅行に始まり、このときで12回目でした。お互い旅慣れているつもりでした。

これまでの旅行で、一度も危険な目に遭ったことがなかったので、治安がよくないと有名なバルセロナでも、私達が被害者になるはずはないだろうという、根拠のない自信がありました。

また、マイルが貯まる、海外旅行保険も自動付帯されている航空会社提携クレジットカードを複数枚所有していて、どのカードも当然、それなりに手厚い内容の補償がついているのだろうと思い込んでいました。実際に利用する機会がなければ知る必要性も感じず、出発前に補償内容を確認しなかったことは、旅慣れた者らしからぬ大きな見落としでした。

不運はホテルから始まっていた

さて、旅行出発当日。成田空港(NRT)発の便をヒースロー空港(LHR)で乗り継ぎ、バルセロナ空港(BCN)からはカタルーニャ広場行きのバスで移動、夜遅くホテルにチェックインしました。遅延も間違いもなく、ここまでは順調でした。

偶然の不運の重なりは、ここから始まります。

キングサイズのベッド1つの部屋を予約していたのですが、部屋に入ってみるとベッドは2つ。フロントに電話して聞いたところ、明日ならベッド1つの部屋が空くとのこと。

今思うと、ベッドは1つずつ十分に広くて快適だったので、わざわざ部屋を移るほどでもなかったのですが、翌日、移動することになりました。部屋の準備ができ次第、ホテルのスタッフが次の部屋にスーツケースを移動しておいてくれるということでした。

カタルーニャ音楽堂

翌朝、観光に出かける前、スーツケースはすぐ運んでもらえる状態に準備しておきました。

貴重品は、通常なら、パスポート原本や今日使う予定がない現金やクレジットカードは、部屋のセーフティボックスに入れて出かけます。

貴重品をセーフティボックスに入れず身につけて外出する

でもこの日、夫は
「自分達がいないうちに、スタッフがスーツケースを運んでくれて部屋を移動するのだから、この部屋のセーフティボックスは使えない」
と考え、貴重品をすべて身につけたそうです。手に持つとスリに狙われるからと、日本から持参していたポケットが20個もついているスキー用のジャケットの上着のポケットに、少しずつ分散して入れたそうです。

私だったらフロントに預けることを考えるのですが、夫はなぜか思いつかなかったそうです。そして私は、旅慣れている夫だからと完全に信頼し、貴重品をどうするか確認するのをすっかり忘れていました。完全に平和ボケ。とても旅慣れた人達とは思えません!

さて、バルセロナ観光開始です。今日は、世界遺産でもあるドメネクの建築物を見て回る予定です。
カタルーニャ音楽堂の豪華絢爛な入口を鑑賞してから、地下鉄で移動。Hospital de Sant Pauで下車。サンパウ病院へ向かいます。

オフシーズンで観光客が少ない時期の朝だったせいか、通りには人がほぼいなかったことを覚えています。これも不運でした。必然的に私達が罠にかかることが決定してしまいました。

ハトの糞を拭いてくれた親切な人が実は?

持参した地図で方角を確認し、
「こっちだね」
と歩き始めた直後、ボトっと地図の上に何か落ちてきました。

「ギャー、ハトのふん?!コートにも思いっきりついたよー!ギャー!」
と騒いでいると、通りかかった20代後半ぐらいの男性が、ペットボトルの水とティッシュをくれて、こっちへ来てゆっくり拭けばいいよ、と建物の中へ呼び入れてくれました。

やさしい人に助けられた、と思いつつも、
「この人、悪い人かもしれないから気を付けてね!」
と夫に日本語で言っておきました。夫は外国人で私達は普段は英語で話しますが、男性がもし英語が分かる人ならそんなこと言ったら失礼なので、日本語で言いました。が夫には通じてなかったみたいです。

男性は、夫の上着を拭くのを手伝ってくれていましたが、
「脱いでくれた方が拭きやすいよ」
と言います。

「えー、脱がないほうがいいんじゃない?」
と私が日本語で言うのも聞かず、夫は言われるままに脱ぎました。

今思うと、床に広げたら、どのポケットに財布が入っているかは、一目瞭然だったことでしょう。

その後、私の髪の汚れを夫に拭くように言い、夫が拭いてくれていたところ、男性は急に吐き気をもよおして咳込み、その場を離れて行きました。

「財布がない」

「え、大丈夫?あの人」
とのんきな夫。
「みんなある?財布は無事?」
と私。

「・・・財布が、1個ない」
と夫。ええーっ!やられたのー!!あわてて外に出ましたが、スリの男、いるはずない!もう、信じられないー!!

悪い人かもしれないと最初から少し疑っていた私は、夫の上着を拭いてくれている間もずっと、男から目を離さないようにしていました。でも、髪の汚れをふいてもらう1、2秒ぐらいでしょうか、男から目をそらした一瞬の間に、まんまと盗られてしまいました。

それにしても、敵ながらなんという鮮やかな手口。こういう敏腕スリに一度目をつけられてしまったら、きっとどんなに気を付けても100%やられてしまうんだと思いました。

サンパウ病院

感心している場合ではありません。盗られた財布には何が入ってたの?

クレジットカード2枚。夫の国の運転免許証。日本の外国人登録証。日本円4,000円。日本の住まいの鍵。

ほとんど、普段の旅行なら部屋のセーフティボックスに入れているものばかり。なんで持ってきちゃったのよー。セーフティボックスが使えないと思ってたからでしたね。

観光は中止、クレジットカードを利用停止に

とにかくクレジットカードはすぐ利用停止にしてもらわなければ。日本領事館にも電話しなければならなかったはず。警察にも行かなくちゃ。観光の予定は中止です。急いでホテルに戻ります。

まだ部屋はそのままだったので、部屋の電話から、まずは日本のクレジットカード会社の緊急連絡先にコレクトコールをして、2枚のカードを利用停止にしてもらいます。その後、日本領事館へ電話してみると
「実は今日、同じような報告がもう4件あったんですよ」
とのこと。
「この街には、親切な人はいないと思ってください」
と言われてしまいました。

ホテルに一番近い、英語が通じる警察署の場所を尋ねたところ、グエル邸の近くにあるということでした。

警察で被害届を出し調書の作成

警察での被害届と調書作成の手続きには、2時間もかかりました。

ショック!カード付帯保険に携行品損害の補償が付いていない!

翌朝、海外旅行保険会社にも事故報告して、保険金請求の手続きをしなければ、と思い、持参したPCをネットにつなぎ、クレジットカードの付帯旅行保険の補償内容を確認してみたところ、夫の「JAL・JCBカード 普通カード」には、携行品損害の補償がついていませんでした!ついていないものは、報告も請求もできません。そもそも今回盗られたものは、ほとんど補償の対象外のものばかりで、もしきちんと保険に加入していたとしても、補償を受けられるのは財布本体のみだったと思いますが。

さらに、手厚い補償がついているのは私名義のクレジットカードだけで、夫名義のカードの補償内容は低かったことも、ここで初めて気づきました。マイルを使った特典旅行手配の担当は私なので、マイルが貯まる年会費が高めのカードは、私だけが持っていたのでした。

それにしてもこのJALカードの付帯保険、「傷害死亡・後遺障害1000万円」と「救援者費用100万円」のみで、疾病治療もついていません。これでは海外旅行保険が付帯しているとは言えないレベルです。

よりによってそのことに、一番旅行保険が重要なバルセロナで、実際に被害に遭ってから気づくなんて!旅慣れた人とは思えません!JAL提携カードというブランドだけで内容も確認せず、思い込みで信用しすぎていたことを反省しました。

遭ったのがもし強盗で、大怪我させられていたらもっと大変だった、財布を盗られただけだったのは不幸中の幸いだったと思いました。

グエル邸

今回の旅程は7泊でした。被害に遭ったのは2日目の午前中です。2日目の夜からその後の観光は楽しみましたが、どこへ行っても常に、またスリに遭うのではないかとずっと怯えながら街を歩くことになってしまいました。

また、時間はたっぷりあったのに、サンパウ病院へ再訪する気にはとてもなれませんでした。見たかった観光スポットをひとつ見逃してしまったことになります。とても残念です。

被害に遭った5分後にカードが使われていた!

さらに帰国後、旅行中の利用分を含むクレジットカード利用明細が自宅が届いたときのことでした。夫のカードの明細に、使った覚えのない3,000ユーロもの高額請求があります。

ここで被害届が役に立つ

あっ、このカードは盗られた財布に入っていたカード!不正使用されたんだ!と気づいたとたん、さーっと血の気が引きました・・・。
あわててクレジットカード会社に電話をし、事情を説明すると、すぐ調べてくれるとのこと。

「現地警察で盗難届は出されましたか?」
「はいっ!」
「ではそのときにもらった調書をこちらへお送りください。」

保険金請求はできなかったので、使い道がないと思っていた警察の調書ですが、ここで役に立ちました。

数日後にカード会社から報告があり、3,000ユーロの利用は、私達が被害に遭った時刻の約5分後だったということが分かりました。提出した調書のおかげでそれが証明でき、カード会社に利用停止の国際電話をしたときの情報とも一致するので、すぐに不正使用と認めてもらうことができました。

カード利用代金の引き落とし日前に調査結果が出たため、3,000ユーロ一時負担することにもなりませんでした。

私達がホテルに戻ってカード利用停止の国際電話をするまでの間に、素早く不正使用するだなんて、やっぱり敏腕スリ!現場から5分以内の距離に、高額な不正使用をサインも暗証番号もスルーして受け付ける店舗もあったことになり、組織的な犯罪だったのかもしれません。

バルセロナでのスリ対策

バルセロナでは、たとえ気を付けていても、誰にでも犯罪に巻き込まれてしまう可能性はあります。一度にたくさんの貴重品は持ち歩かないことだけが、その対策になると思われます。財布も、中身が空の古い財布など2つ以上持ち歩けば、空の方だけが盗られて実被害がなく済む可能性もあります。

また、通りに人がほとんどいなかったことも、私達がターゲットにされてしまった理由だと思っています。観光客であふれている場所の方が、ターゲットとして選ばれてしまう確率は下がるものだと私は考えています。

旅立つ前に旅行保険に携行品損害補償が付いているか確認を

スリや盗難の被害の場合、携行品損害保険で補償される範囲は狭いですが、襲われて怪我をしたりする可能性も考えて、海外旅行保険の補償内容全体を出発前によく確認し、十分な補償内容の旅行保険に加入して出発することをおすすめします。

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